3.11 検索は、チカラになる。
https://search.yahoo.co.jp/search?p=3.11
User Profile
Language: Japanese, English(beginner) Interest: Science
This link opens in a pop-up window
cactus's books
Recommended Books of Science (Public) (View all 5)
User Activity
RSS feed Back

cactus reviewed Lost in math by Sabine Hossenfelder
"Whether pondering black holes or predicting discoveries at CERN, physicists believe the best theories are …
科学をしている"私達"を見る
4 stars
Content warning 数学に魅せられて、科学を見失う ネタバレ
ここ30年、理論物理学の分野は新たな発見をしていない。重力波やヒッグス粒子は50年前やそれ以上前に予言されていたものだ。 自身も理論物理学者であるザビーネ・ホッセンフェルダーさんはそう述べる。そして、様々な理論物理学者にインタビューをしながら、理論物理学の危機的な状態と、問題の本質に迫ろうとする。 作者は度々、「(まだ実験で確かめられない)物理学の理論を選ぶにあたって、自然さ・単純さ・エレガントさ...は、本当に客観的なのではなく、近年の歴史での成功に基づいている」という旨の指摘をしている。より具体的には、「極端に大きい値や小さい値が出るとおかしいと思う」「微調整を好まない」といったことなのだが、そのようでないといけない客観的な根拠があるのか、と作者は疑問を呈しているのだ。
本書でも示唆されているが、このような問題の本質には、日本の科学者と同じような、不安的な雇用や短期間で結果を求められるような世知辛い仕組みや、「科学を行うのは人間である」ことがあるのではないかと感じた。前者については、ある程度愚痴をこぼす研究者もいる(そしてアクションを起こす研究者はやや少ない)一方、後者については、あまり自覚していない方も多いような気がしている。 科学に取り組む人々も「人間」であり、様々なバイアスから逃れることは難しい。バイアス自体は、人間の生存に役立ってきたが、科学に取り組むときには、ジャマになることもある。このようなバイアスの中でも、理論物理学をより良い方向に持っていくためには、バイアスに頼りにくいような仕組みづくりや、科学に取り組む人々が、科学哲学や心理学の学習を通して、バイアスその他に自覚的になる必要があると思う。(残念ながら、物理学分野の人は、哲学分野の残念な状況を見て、バカにしてきた歴史がある。それぞれが歩み寄り、軌道修正を目指していただきたいものである。)
cactus rated なぜ働いていると本が読めなくなるのか: 4 stars
cactus reviewed Satoyama to iu monogatari by Masami Yūki
遅効性の衝撃
4 stars
Content warning ややネタバレ(里山という物語)
イメージ曲:town(まももP)
昔体調を崩して、深夜まで眠れなかったことがある。気を紛らわすために、テレビを付けると、NHKの「ニッポンの里山 ふるさとの絶景に出会う旅」という番組が流れていた。 清らかな水、日の当たる田んぼ、受け継がれてきた文化。今まで気づかなかった「里山」の魅力に、惹きつけられた。その時の原体験が将来の環境問題への関心につながっているのかもしれない。 里山、という言葉は、今評者達の中に広く浸透し、海外に向けて「SATOYAMA」なる言葉もできている。環境関連の政策でも「里山」という言葉が出てくることもある。 「里山」というと、何の気無しにイイカンジがするが、ちょっと待てよ、と立ち止まるのが、人文学を研究する人々なのかもしれない。 彼らによると、「里山」に関する研究は、自然科学によるもののほうが多く、「里山」という概念の奥にあるものはあまり研究されてこなかったという。 その「里山」について、歴史的な背景や、そもそも「里山」とはなにか……といったことを、様々な人文学研究者が紐解いていくのが本書である。
本書でも度々登場する今森光彦さんは、現在の多くの方が思い浮かべるような意味、政策などにも用いられるような意味で、最初に「里山」という言葉を使った写真家。元々昆虫写真家だった彼は、人の手が入った自然(山、田畑、集落その他)や、そこに息づく昆虫を美しく捉え、「里山ブーム」の火付け役になったそうだ。 実は、「ニッポンの里山」の制作に関わっているのも彼で、「ニッポンの里山」を始めとする彼の作品の特徴を列挙する部分(カティ・リンドストロムさんの章)では、「ああ、あるあるだ」と思わずにはいられなかった。 そして、悲しいことに(?)、これらの作品をどこか冷めた目で見つめるような自分が出来上がってしまった。
そして、「里山」という言葉には、少なからず、実際の歴史とは異なる、幻想的な部分が存在すると本書では通して指摘される。環境関連のことを学ぶ過程では、評者は「里山」なるものについて、キラキラした眼差しを持っていたが、それも、これからは無くなっていきそうだ。鈍器で殴られたような衝撃はなかったが、評者にとって、これらの指摘は遅効性の衝撃のようである。
ただ、それは悪いことばかりではないと思う。研究の種は、皆が通り過ぎるもの、そのまま受け止めるものについて、立ち止まって疑問を持つことからも始まる。それが、最終的には、より良いものへと還元されることもある。 今後も、学際的な分野としての「環境人文学」に注目していきたい。

ddquino started reading 海獣学者、クジラを解剖する。 by 田島木綿子

本日から読書週間でもあるのですが、その初日は法令で定められた文字・活字文化の日です。
本や書店や図書館を応援しています!
🗓️10月27日(日)・文字・活字文化の日/読書週間/秋土用
🗒️旧暦9月25日/甲子きのえね
cactus reviewed 環境倫理学のすすめ【増補新版】 by Hisatake Katō
私達はなぜ環境を守るべきなのか
3 stars
Content warning 環境倫理学のすすめ ネタバレ
「環境倫理学のすすめ」は、「なぜわたしたちは環境を守るべきなのか」という疑問に応えようとする分野である「環境倫理学」について、日本語で書かれた最初の入門書だ。 本書が書かれたのは1991年、インターネットが今ほど広がる前の時代。皆の話題の中心はまだテレビだったころだ。 環境問題に関して言うと、この頃よりも状況は悪化していると思う。海には少なくない数のプラスチックごみが浮き、生物が誤食して、被害をもたらしている。「地球温暖化」はもはや「地球沸騰」と呼ばれる。気候変動は、間違いなく私達を殺しにかかってきている。外に出られないレベルの酷暑、9月に入っても猛暑日が続き、10月に入っても真夏日がチラホラ。毎年日本の何処かで豪雨災害が起き、2024年は地震に見舞われた能登半島で、二重災害となった。 もはや何らかの対策は必須なのだが、その正当性はどこにあるのか。そこに環境倫理学は入り込んでくる。 環境倫理学は、主に3つの主張をしている。 1つ目は、「人間と同様に、自然物も権利を持っており、人間が優越することはない」 2つ目は、「私達は、未来の世代の生存に対して責任がある」 3つ目は、「地球は無限ではなく、有限の資源を持ち、そこで閉じている」
本書は、それぞれの主張について、やや読みにくいものの、詳細な説明をしている。 どの主張も、現在では割と受け入れられているのではないだろうか。特に2つ目の主張は、SDGsで示された考えとも共通する部分がある。 また、本書では、環境倫理学と生命倫理学を比較している部分がある。 環境倫理学は、比較的全体主義的なのに対して、生命倫理学は割と個人の自由を重視しているが、日本に関して言えば、環境倫理学と生命倫理学の間を行ったり来たりしているような感じがある。 このあたりの比較も中々興味深い。
環境問題はもう単なる「趣味」の域を超え、人類全体の生存の問題となりつつある。行動を起こす人、起こしたがらない人、どちらも倫理学の問題を深く考えている人ばかりではないだろう。しかし、がむしゃらに飛び回った後で、「何のためにやってるんだろ。」とふと立ち止まったとき、環境倫理学はそんなあなたのそばに寄り添い、ときには叱咤激励したり、勇気を持って背中を押してくれたりする。 環境倫理学に限らず、学問にはそんな一面もあると思う。
cactus rated 失敗の本質 日本軍の組織論的研究: 3 stars
cactus rated What is real? (実在とは何か ─量子力学に残された究極の問い): 5 stars

Adam Becker, Yoshida Michiyo: What is real? (実在とは何か ─量子力学に残された究極の問い) (Japanese language, CHIKUMA SHOBO)
What is real? (実在とは何か ─量子力学に残された究極の問い) by Adam Becker, Yoshida Michiyo
"Quantum mechanics is humanity's finest scientific achievement. It explains why the sun shines and how your eyes can see. It's …
cactus rated 海の中から地球を考える ~プロダイバーが伝える気候危機~: 4 stars
cactus rated The extraordinary colours of Auden Dare: 5 stars

Zillah Bethell, Sambe Ritsuko: The extraordinary colours of Auden Dare (Hardcover, Japanese language, SHOGAKUKAN)
The extraordinary colours of Auden Dare by Zillah Bethell, Sambe Ritsuko
I am how I've always been. My name is Auden Dare. I am eleven years old. Auden Dare has an …
cactus rated 量子論はなぜわかりにくいのか 「粒子と波動の二重性」の謎を解く: 4 stars
cactus finished reading Waters of the World by Sarah Dry

Sarah Dry, Togo Erika: Waters of the World (Hardcover, Japanese language, KAWADE SHOBO SHINSHA)
Translater: Togo Erika (東郷えりか)
作:セアラ・ドライ 訳:東郷えりか 2020年08月27日
イメージ曲:「Come Monday(Jimmy Buffet)」
2024年現在、所謂地球温暖化などの気候変動は、小学校でも当たり前のように扱われている。気候変動の被害は、立場の弱い人々ほど大きくなることから、気候変動は人権問題とも結びつけられており、世界各国において、「ちゃんと対応しろ」と主張する社会運動も盛んだ。
それもそのはず、気候変動の警告は20世紀からずっとあったのにも拘らず、皆経済成長を優先して目を背けてきたからである。今でも、気候変動に対して、積極的な姿勢を取らない政治家が一定の支持を得ている。
地球の気候に関する理解は、シャーロックホームズが活躍した19世紀から様変わりした。
我々が当たり前のように考えている地学の常識は、19世紀から21世紀にかけて、どんどん確立していったものなのである。(それこそ、1950年代の「沈黙の春」では、冒頭で陸の橋がどうのこうのと述べられている。)
本作は、現在の気候科学が形作られていく(1つの)過程を、6人の科学者の姿とともに、描き出す。19世紀の科学者、「ティンダル効果」のジョン・ティンダルに始まり、最終章では、「ダンスガード・オシュガーサイクル」のウィリー・ダンスガードを扱う。
その中で、「変化せず、穏やかな地球」から、「変動の激しい地球」という我々の地球に対するイメージの変化も知ることができるのではないだろうか。
本作によると、気候科学は、様々な学問の寄せ集めのような性質を持ち、それ自体が学際的だという。そして、気候科学を扱う上での難しさも度々述べられる。地球の気候のシステムは、とても大きく、複雑なのである。
評者は海洋学にも興味を持っているが、かつて、地球温暖化や、海洋熱波について興味を持ち、調べてみようとしたところ、その問題の複雑さに圧倒されたことがある。
物理学や数学のように、問題をスッパリと語ることはとても難しいのだ。
評者の素人考えだが、この複雑さが、気候変動の問題について、様々な意見を生み出しているのだろう。ちょうど、他の政治問題について、色々な意見があるのと同じような理屈である。
翻訳の問題か、文章の構成(順番)の問題なのか、Aさんの話をしていると思ったら、いきなりBさんの話になり、またAさんの話になる…といった感じで話が進むので、人によっては読みにくいと思うかもしれない。(カタカナの名前がたくさん出てくるのもある)
とはいえ、気候科学の複雑さ、難しさを、歴史の観点から実感する、という意味では良書だと思う。気候科学をある程度知っている人にお勧め。